「F持ちの選手はスタートを踏めない」は本当か
出走表の「F1」は実際どれくらいスタートに効くのか。同じ選手のF無し期間とF持ち期間を比べる形で、約117万走を数えました。
競艇を少し見ている人なら、こんな解説を聞いたことがあると思います。
この選手はF(フライング)を持っているので、スタートは踏み込めないでしょう。
当サイトでは、こうした「よく言われるけれど誰も数えていない話」を片っ端から確かめています。今回の結論から言うと、この定説は正しかったです。しかも、思っていたより明確な形で。
なぜ「平均STを比べる」だけではダメなのか
F持ちの選手のSTと、そうでない選手のSTを比べればいい——と思いがちですが、これには罠があります。
Fを切りやすいのはそもそも攻めるタイプの選手です。つまり「F持ち選手」という集団には、普段からスタートが速い人が偏って含まれている可能性がある。単純に比較すると、この偏りが結果を汚染します。
そこで同じ選手の中で比べました。「Aさんが F を持っていなかった時期のST」と「Aさんが F を持っている時期のST」を比較する。こうすれば選手の実力差・気質の差は打ち消されて、F持ちという状態の効果だけが残ります。
対象は約117万走。出走表時点でのF数と、そのレースでの本番STを突き合わせました(フライング・出遅れで計測不能なものは除外)。
結果: F1で+0.02秒、F2以上で+0.07秒
| 比較 | 対象選手数 | 平均STの変化 |
|---|---|---|
| F1持ち − F0(F無し) | 1,515人 | +0.019秒 |
| F2以上持ち − F0 | 289人 | +0.068秒 |
プラスは「遅くなった」という意味です。F持ちをまとめた平均差は +0.0206秒、95%信頼区間は +0.0199 〜 +0.0214。ゼロから大きく離れており、偶然では説明できません。
94%対象1,521人のうち1,435人が、F持ち期間に遅くなっていた。
「一部の慎重な選手が平均を引っ張っている」のではなく、ほぼ全員が同じ方向に動いている。個人差はあれど、これは競艇選手という職業に共通した行動原理だと言っていいと思います。
「遅くなった」ではなく「守りに入った」証拠
さらに面白いのは、F持ちの状態別にフライング率と出遅れ率を見たときです。
| 状態 | 走数 | 平均ST | F率 | L率(出遅れ) |
|---|---|---|---|---|
| F0 | 977,727 | 0.161 | 0.43% | 0.009% |
| F1 | 175,405 | 0.175 | 0.25% | 0.013% |
| F2以上 | 6,735 | 0.214 | 0.07% | 0.030% |
F持ちが増えるほど、フライング率は下がり(0.43%→0.07%)、逆に出遅れ率は3倍以上に増えています。
これは重要な意味を持ちます。もし「F持ちだと調子が悪くなる」のような曖昧な話なら、F率もL率も一緒に悪化するはずです。そうではなく、F率だけがきれいに下がってL率が上がっている。これは選手が意図的にスタートラインの手前側へ安全マージンを取っている——つまり「踏めない」のではなく「踏まないことを選んでいる」ことの直接的な証拠です。
F持ちでのフライングは、選手にとって出場停止という重い代償を伴います。その合理的な帰結が数字にそのまま出ている、というわけです。
用量反応がある
もう一点。F1(+0.019秒)とF2以上(+0.068秒)で、効果の大きさが3倍以上違います。
F2以上を持つ選手の平均STは 0.214。これは全体分布で見ると下位25%相当の水準で、1周1マークの体勢に直結するレベルの遅れです。「F持ち」とひとくくりにせず、何本持っているかまで見る価値があるということになります。
で、これは儲かるのか
正直に書きます。これ単体では儲かりません。
理由は単純で、F持ちの情報は出走表に載っている公開情報だからです。オッズにはとっくに織り込まれています。当サイトの予想モデルにも、この情報は最初から特徴量として入っていました(今回の検証で新たに追加したものではありません)。
では何の役に立つのか。展開を読むときの解像度が上がります。
- F2持ちの選手が外枠にいるレースで、「あの選手のまくりが怖い」という読みは、たぶん当たりません
- 逆に、F持ちの選手が内枠にいる場合、その艇のスタートが甘くなる分だけ外の艇が動きやすくなる
「なぜこのレースはこういう並びになりそうなのか」を説明できるようになる、という類の価値です。当てるための魔法ではなく、納得して見るための道具。
サイトでの使い方
この検証結果は選手ページとレースカードに実装済みです。各選手が「F持ちのとき実際に何秒遅くなるか」を個人単位で表示していて、全国平均(+0.019秒 / +0.068秒)と比べて慎重なタイプか、F持ちでも攻めるタイプかが分かるようになっています。
データは公式サイトの公開情報を利用規約の範囲で取得したものです。
よくある質問
競艇でF(フライング)を持っている選手はスタートが遅くなりますか?
はい。同一選手内で比較すると、F1本の期間は平均+0.019秒、F2本以上の期間は平均+0.068秒スタートが遅くなります。約117万走を対象とした集計で、対象1,521人のうち1,435人(94%)が実際に遅くなっていました。
F持ちの選手はなぜスタートを緩めるのですか?
F持ちでのフライングは出場停止という重い代償を伴うためです。実際、F本数が増えるほどフライング率は下がり(0.43%→0.07%)、逆に出遅れ率は3倍以上に増えます。踏めないのではなく、スタートラインの手前側に安全マージンを取っていると解釈できます。
F持ちの情報は舟券の予想に使えますか?
この情報単体で利益を出すことはできません。F本数は出走表に載っている公開情報のため、オッズにはすでに織り込まれています。有効なのは展開を読むときで、F2持ちの選手のまくりは決まりにくく、内枠のF持ち選手のスタートが甘くなる分だけ外の艇が動きやすくなります。
このサイトについて
BOATRACE DATA は、AIによる競艇予想とその収支をそのまま毎日公開している個人運営のサイトです。当たった日も外した日も同じように出しています。予想の販売はしていません。